U-MAIL(ウンコ通信) 2004/07/12
えー、草原のホリエ・ケンイチと言うか、なんともノーテンキなヤンキーのハナシ。
「ヘラ鳥ウォッチング」
「GOLFING IN GENGHIS KHAN'S FOOTSTEPS」:07/05
「壮大、ジンギスカンのゴルフコース」 ジェームズ・ブルック
(モンゴル・アルヴァイヒーア発)
アンドル・トルムは、今日プレイするゴルフ場の広さを測ってみる。樹木の一切無い草原が、遥かな地平線まで何十キロメートルも広がって居る。
150キロ四方、他のゴルファーの姿は見えない。彼はユッタリと素振りする。3番アイアンだ。そして力強いひと振り、白球はモンゴルの紺碧の空の彼方に消えて行った。
「会心のショットやねん」トルムはつぶやく。「ここでは思いっきり飛ばせるのや」
ウム、その通りだろうって。この夏、ニューハンプシャからやって来た土木技師、トルムは、モンゴル横断ゴルフにゴキゲンなのだ。
中央アジアをテメエひとりのプライヴェートコースに見立てて、モンゴル18ホールを設定した。フェアウェィ全体の距離は2,123,000メートル、パーは11,880。
「兎に角、球をブッ叩けばイイ」テキサスの2倍の広さ、柵の無いこのコースでのテクニックをトルムは披露する。
「球を探す。ショットする。探す。ショットする。繰り返し繰り返し、涯しなき草原の上に、千年ムカシのジンギスカンの道を辿るのや」
フェアウェィはマルデ手入れされていないが、北を見ればシベリアの森林、南を見ればゴビ砂漠、世界最大のバンカーが待ち構えて居る。
キャディは、水と食料とテントをロシア製のジープに積み込む。ジープには手縫いの敷物が敷き詰められて居る。
5月28日にティーオフしたトルムは、7月末に、Dund−Usの貿易センターでホールアウトする計画やねん。
3番アイアン1本サラシに巻いて、悪戯小僧の笑み浮かべた孤独なアメリカ野郎のモンゴル横断ゴルフには、いくつもの楽しみがある。
仏教徒モンゴル人のアメリカ人への友情。モンゴルの広大な地勢。カントリークラブのゴルフなんざ鼻汁も引っ掛けない、ヤング・ヤンキーの究極のゴルフ。
35才のトルムの、これは夏のアドヴェンチャーなのだよ。
夜は狼のコーラス。コッチ目掛けて疾走して来る少年たちの騎馬レースに呆然と立ち尽くしたり。遊牧民の歓迎は大きな楽しみ。驢馬の発酵乳をゴチになり、驟雨を眺め、平原に落ちるカミナリを眺める。
昨夏、この国の東半分をゴルフしながら廻って、トルムはモンゴルのイロハを勉強したのや。途中の主要な町々を各ホールに見立てている。町に着くと球をポケットにしまい込み、町を散策した後、出口で再びティーアップするのだよ。
「スタートの時だけティーを使う」そして、寒暖激しいモンゴル、凍てついた時には、冬期のルールを適用する。
昨夏は、6月5日にモンゴル極東、中国との国境地帯、ムカシのソ連陸軍駐屯地チョイバルサンからティーオフ。草茫々のコースに手コズリながら、50日かけて、352ケのロストボールの末、第9ホールのこの町に辿り着いたのや。案内書に「見るべきトコロも無い、ホテルもお粗末」と書かれたこの町に。
このアルバイヒーアは、モンゴル地図の中央から西へ160キロの地点だが、トルムは、ここから約5000ストロークで西の果ての最終ホール、深い湖や高い山や急流河川で観光客に人気の高い町、Dund−Usに、球を打ち込めると踏んで居るのだよ。
手持ちの羅針盤をタヨリに、山裾を廻り、オンボロ修道院や、ディノザウルスの骨が出土する地域を抜けて、1日約16キロをコナスつもり。
ただ、7月末の雨季に入ると草がバクハツ的に伸びてしまう。その辺が彼のデッドラインなのや。
草原での最高のタノシミは、大空の下で羊と一体になって暮らす人々に逢うことなのだ。
「オドロキだよ。ニンゲンは何もしなくても、こんなに気楽に幸せに暮らせるんだ。文明のヒリ出すガラクタオモチャなんぞクソ食らえってんだ」
「簡素なテント暮らしの人々は、冗談を飛ばし合い、笑って楽しむことを識ってるのさ」
トルムのウェブサイトは、こうした遊牧民との微笑ましい出会いの報告でイッパイ。
少年たちに羊の毛の刈り方や、裸馬の扱い方を習ったり、ゴルフの無料レッスンをしてやって3番アイアンを傷だらけにされたり、ミンナで大酒飲んでバタンキューとテントの中で眠り込んだり。
モンゴル人もゴルフに目覚めつつある。昨年、ウランバートルに、初のゴルフコースがオープン。馬に跨がったキャディが球を追って、その場所に矢の付いた旗を立てるのだ。
トルムの第6ホールであるウランバートルでは、先月、室内練習場もオープンした。しかしモンゴルでゴルフ倶楽部なんてクダラン。大衆的クロスカントリー・ゴルフをやるべきだよ。
しかし、払下げの迷彩服着込んだ退役軍人であるトルムのキャディは、このアメリカ野郎のゴルフに納得行かないらしい。
「アタシャ、ゴルフなんざ、良く知らねえけどよ、テレビで見る限り、チッポケな球をチッポケな穴に入れるんじゃないのかね?」
ウム。イイネエ。バカバカしくって。もう直ぐイギリス・オープン。あの荒涼たるリンクスも素晴らしいけど、スケールから言ったらモンダイにならない。ジンギスカンが上やねん。
ワメ惟うに、日本人にとって、ネコも杓子ものゴルフ18ホールは、一種の巡礼行脚、それぞれの墓穴に、お骨代わりにテメエのタマを埋めて回るんだわさ。90才過ぎても毎週コースに出るご仁が居てはるけど、あれは無意識にシミュレーションやってるんだよ。
ゴルフ習俗には、そう謂った仏教的要素が有ること知ってか知らずしてか、このヤンキーさんは、イラクもアフガンも小ブッシュの苦労もどこ吹く風、夏のプライヴェート・アドヴェンチャーと来たもんだ。だけど、よく考えてるよ。万一、追剥ぎが出て来ても、サラシに巻いた3番アイアン1本あれば、護身用になるしなァ。は。