U-MAIL(ウンコ通信) 2006/06/13-2
《CLASS IN AMERICA》
「アメリカの社会階級」第5回:05/05/25
5)《TRAP FOR THE WORKING CLASS : A RISE IN COLLEGE DROPOUTS》
「労者働階級への罠:大学ドロップアウトの増加」 デヴィッド・レオンハート
(ヴァージニア州・チルハウィー発)
アンディ・ブレヴィンが、今、後悔している重大な決心。でも、その時には大したことじゃないと思ってた。ごく自然な成り行きだったと。
1995年、彼は缶詰スープや、ペーパータオルや、ドッグフードなどの箱を、ここ南西ヴァージニア最大のスーパーマーケットの倉庫に運んで居た。
ヒドイ暑さだった。夏休みの小遣い稼ぎにやって来た、まだ10代のヒョロヒョロの大学1年生は、とてもじゃないが、ツトマリそうもないと思った。
6.75ドルの時給の他に、ボーナスが出た。両親の稼ぎより多い額だった。ガールフレンドも兄弟たちも一緒に働いた。
スンバラシイ夏だった。で、こう思った。学校はチョイ休んで働き続けよう。学校の成績はCやDばっかりだし、あんまり居心地よくなかったのや。
「けっこう楽しく働いた。仕事にも慣れ、給料を貰えた」ブレヴィンは当時を振り返る。でも家族中で彼が最初の大学生だったから、「大学をヤメたくはなかった」と。
しかし、彼は大学をヤメた。つまりブレヴィンは、今アメリカで、一番急速に増えているワカモノのグループに入ったのだ。「大学ドロップアウト」のグループに。
多くのワカモノが彼のように、復学して資格を取るつもりだ。実行はムズカシイのだが。今、20代半ばのワカモノの3人に1人がこのグループに落ち込んで居る。1960年代には6人に1人だったが。その殆どはビンボーな労働階級出身のワカモノなのだ。
「アメリカ国内で今、一番深刻なモンダイは、カネモチ階級の子供とビンボー階級の子供のギャップが拡がりつつあることだ」ハーヴァード大学総長ローレンス・サマーは昨年、新しい学資援助計画を発表するに当たって、そう言った。「そして、このモンダイに対処するための一番強力な武器は教育なのだ」と。
だが現代、子供たちは以前にも増して、親と同じ道を辿るようになって居る。学校の成績が社会的成功に直結する。そして、その成功が次の世代に順送りされるのや。
ブレヴィンは、今になって、学位の重要さに気付いたと言う。このチルハウィーの町から105キロ離れたラドフォード大学に通っている時には自覚してなかったと。大学授業と倉庫アルバイトを交換して10年、29才になったブレヴィンは、相変わらず同じスーパーマーケットの会社で働いて居る。仕入係に昇進して、給料は年3万5000ドル。医療保険と年金付きだ。
ブレヴィンは、大学で4年終了学位を取れなかった学生の典型。このまま、この仕事を続ければ、40代になっての平均給料は4万2000ドル。学位を取っていれば6万5000ドルだ。
でも幸福だと彼は言う。愛妻カタリーナと1才の息子とともに、美しいアパラチア渓谷の中にあるルーカスで暮らして居る。でも「振り返ると、やっぱり学位を取っておいた方が良かったと思う。あの頃は4年間がベラボーに長く思えたのだよ。今は、出来たら4年を終了したいと思ってる」
なぜ、低所得階級の多くの学生が、大学をドロップアウトするのか?これは難しい質問なのだよ。多くの高校には大学進学への準備が無い。さらに大学の授業料が払えない、あるいは、そのために後年まで借金が残る。ブレヴィンにとっても、毎週の授業は、ただおカネを失くしている、としか思えなかったのだ。
「こうした学校システムは、学生にウソの約束をして居る」造船所労働者の息子だったヴァージニア大学総長ジョン・カスティーンは言う。総長としてこの15年間、彼は、この有名大学の威信にかけて、経営資金を集めることと、学校組織を広げることに専念して来たのや。その間、彼自身と同じようなビンボー階級からの生徒はドンドン減った。昨年の卒業生の中、いわゆる下層階級からの生徒は8%、10年前には11%居たのだが。
昨年1年間、なんとかこの傾向をひっくり返そうと努力した、とカスティーン氏は言う。
しかし、卒業の障害は内部事情による。多くの低所得層ティーンエージャーで、無事卒業した者はほとんど居ない。
卒業出来ない学生の大半はワカモノで、出来るだけ早く就職するべしと言う工場労働倫理が色濃く残っている町から来ている。工場は消えつつあるのだが。
ヴァージニア大学を含むいくつかの大学は、学資援助を増やしているだけでなく、経済に重点を置くことを約束して居る。
いくつかの人口密度の高い州では既に、人種格差による優先入学を禁止して居る。最高裁も近い将来、優先入学は法律違反と見做され、問題は人種より経済格差になるだろうと。
しかし目下、高所得層の学生の方が低所得層の学生より多めの学資援助を得て居るのや。
その反対の位置に地元大学の存在がある。そこには、アカデミックな成功物語がある。虐待された妻、帰還兵、クビになった労働者、などが生活向上のために行く。
全体的に地元大学は夢が担保される場所になりつつある。学生登録した人のほとんどは、最終的に4年終了の学位を取るつもりだと言う。でも実際に取る人は少ない。
卒業証書は無いけど、アンディ・ブレヴィンは多くのアメリカ人が憧れる生活を送って居る。家族、友人、教会、ゴルフのハンディキャップ5、など。彼は通勤車両の中では座らない。
倉庫では、大抵彼が朝一番、6:30には出勤して居る。炭鉱夫だった祖父の孫として、彼はスーパーマーケットの仕入係にまで出世したことに誇りを感じて居る。仕入係は普通は大卒の仕事なのや。
でも、これが何時まで続くか、心配だ。10年前の父親ドゥワイトの例がある。高校卒の父親は倉庫の仕事から解雇され、他のもっと給料の安い、年金も少ない職業に就いたのだよ。
「どこの職場でも、キミの能力を見ようとはしない」ある晩、アンディ・ブレヴィンは裏庭のベランダに座って言った。「キミが卒業証書を持っているかどうか、それがモンダイなのだよ」
NYタイムズの世論調査では、ドロップアウトの43%が、成功するには卒業資格が必須条件と考えて居る。一方大卒の42%と高校のドロップアウトの32%も、そう考えて居る。
いわゆるエリート校は、応募して来る低所得層の学生に対して、あまりチャンスを与えて来なかった。最近、プリンストン大学の前総長ウィリアム・ボウエンが入学記録を調べてみたところ、テストの獲得点数が同じでも、高所得層に比べ、低所得層の学生が、ハーヴァードとか、エールとか、プリンストンとか謂った19エリート校に入れるチャンスは低かったのや。
運動選手や、親子代々の家族や、少数民族の受験生は、テストの点数が少々悪くても、みんな入学する。でも、ビンボー階級の生徒は入れないのだよ。
低所得層の学生を沢山入学させると、イロイロ面倒なことになる。1年生が多すぎると、その大学の学習能力適性テストの平均点が下がるのや。それは大学の格付けに影響する。
低所得層の合格者が、卒業生の子弟より少ない理由のもうヒトツは、卒業生たちが、大学の資金集めの主体になって居るからだよ。彼等は高額の授業料を払うことが出来るのや。
この冬一番の雪が残っている2月の朝まだき、アンディ・ブレヴィンは自分のジープの雪を掻き落とし、スーパ−マ−ケットの倉庫に向かう。隣の住人、ナッシュのクルマは道路に置きっ放しだ。ナッシュは小学校のカウンセラー。ブレヴィンも属している教会コーラス団の中では、ただヒトリの大学出。雪で今日は休みなのだ。ブレヴィンは去年の実働日数を数えてみた。280日。将来は見えない。
その数週間後、ブレヴィンの「大学への夢」と、それについての妹リーナとのお喋りは現実的なものに変わった。
小学校の教師になろうかと思うんだけど。そうすりゃ年に280日も働くことは無い、せいぜい180日だ。クビになることは無いし、年金も付くし。
決心した。ブレヴィンはヴァージニア・ハイランド地域大学に入学し、夜間部に通うことに。ヴィディオとインタネット利用の講義も取った。3年以内に学位を取るつもりだ。
ウム。日本よりアメリカの方が、「学歴社会」なのや。これは実際の学力と言うよりも、相手がドコのウマノホネが分からない社会では、一種のパスポートとして機能するのや。
しかし、こうした「大学への夢」をエサにワカモノをリクルートしてイラクに送り込むペンタゴンの手法は、いかに追い詰められたとは謂え、悪辣過ぎるやんけ。