U-MAIL(ウンコ通信) 2006/06/19 


《CLASS IN AMERICA》

「アメリカの社会階級」第7回:05/05/30


7)《STAFF,NOT STUFF,CLUES THE'HAVES'》

「何を持っているか、ではなく、どんな個人的サーヴィスを享受できるか、が上流階級の証し」

ジェニファー・シュタインハウアー

(オハイオ州・ビーチウッド発)

此処ビーチウッド・モールは、今、午後4時半、晩の食事前の一時のラッシュ・アワーやねん。売り子たちは、ただの見物人と見込み客を見分けねばならぬ。プラチナ・カードの持ち主と、月々の生活予算ギリギリの客とを見分けねばならぬ。

それが意外にムズカシイのだよ。サックス・フィフス・アヴェニューの売り子エリン・リビィは言う。「いつも3000ドル以上のスーツを買ってくれる客がいるんだけど、とてもそんな風体じゃないのよ」

ゴディヴァ・チョコレート店のマネージャー、マーク・フィオリリも言う。誰がカネを持っているか分からないと。大きなダイアモンドの指輪を嵌めた若い女性も買うし、以前には航空機部品の検査官だった身体障害者も買う。「まるで見当つきまへんのや」

かつては、クルマや、手にした財布から、直ぐに相手の社会階級の見当がついた。しかし今、買う物から見当つけるのはムズカシイ。

人々の収入が増え、物の値段が平均化し、階級を見分けるテダテだった高額商品も、クレジットの普及によって、そのメドにならなくなってしまった。

中産階級の家族だって、最新の薄型テレビを持ってるし、BMWに乗って、高いチョコレート買いに来るのや。

上流階級は、せいぜい「COSTCO」でワインを買うとか、「TARGET」でバスタオルを買うとかで差を付ける。

誰もが階級不明の群衆の中に溶け込んでしまう。いかにも高級といった衣服を敬遠して、カジュアルなジーンズとシャツ姿を好む。

でも、ステータス・シンボルが消えたわけではない。

これぞアメリカ、という、13万ドルのSUV(スポーツタイプ車)、600ドルのジーンズ、800ドルの理髪、400ドルのワインを宣伝する新雑誌。

しかし、ちょっと目には分かり難い、上流階級独特の消費パターンがあるのや。上流階級はカネの使い途を、人的サーヴィスと、特定の体験にシフトして、成上り大衆から自らを区別するのやねん。

今、アメリカの上流階級は、9000人のシェフを個人的に雇って居る。10年前には、400人だった。

上流階級アメリカ人は、エキゾチックな休暇を楽しむ、多くは自家用ヒコーキで。高額な整形美容や皮膚美容を受け、しばしばこれがモトで訴訟になったりもするが。

子供を1時間400ドルの数学教室に通わせ、フランスの古城巡りのサマー・キャンプに出す。また、おカネの使い方の特訓指導を受けさせる。

「新薄型テレビを持っているかどうか、ではなく、他人にどんなサーヴィスをさせているか、を見ることが重要なのだよ」NY大学の社会学者ダルトン・コンレイは言う。

モノとサーヴィスが、社会的位置を測定する手段。

20世紀初めに「際立った消費」なるコトバを造り出した政治経済学者ソルシュタイン・ウェブレンは、「生活態度と価値のスタンダード」によって、他者との間に柵を作り出したのは、裕福な「有閑階級」だと。「このスタンダードに、あるところまで、近付くことが、それ以下のすべての階級の努力目標になった」と。

その通りやねん、最近のNYタイムズの調査では、アメリカ国民の81%が、高価な物品を買わなくちゃ、と言う社会的圧力を感じて居る。

消費者ブンカを研究しているボストン大学の社会学教授ジュリー・ショアは言う。水準を決めるのは常にカネモチだが、競争するのは大抵、同じ階級の隣人同士だと。

隣の芝生を羨む「水平的欲望」が、カネモチや有力者の持ち物を羨む「垂直的欲望」に変わって来たと彼女は言うのや。

「ムカシは《隣のジョーンズさん》が手本だったのが、今は《マイクロソフトのゲイツさん》に変わった」とショアは言う。もちろん、百万長者しか出来ないことなのに。

多くのアメリカ人は、自分とカネモチの間にドンドン広がる収入のギャップを見つめて、現実的ではない垂直的羨望を持つのやねん。「普通のニンゲンと彼等が憧れる対象の間には深クテ暗イ河がある」とショアは言う。

初め高価な製品だったエレクトロニクス機器は、生産上昇、価格下落とともに大衆市場商品化する。それは発展途上国の安い労働力のオカゲ。

「グローバルな労働力海外委託」は、アメリカ市場にも同様の影響与えるわけだ。たとえば、衣類の価格は、この10年間、チイとも上昇して居らぬ。デパートでの価格は、1994年から2004年の間に10%も下がった。

こうした傾向の市場に参入する高級車製造企業は、より安価なヴァージョンを若向けに発売し、やがて彼等の収入が増えた時、上のクラスにシフトすることを狙うのやねん。

手の届く価格というのも、市場が鈍るヒトツの理由ではある。アメリカ人は、高価なガラクタを積み上げて来た。ほとんど借金やツケで。連邦準備銀行によれば、その負債総額は7500億ドルに達して居る。20年前の6倍だよ。

この大きな伸びは、クレジット産業の爆発的成長による。この20年間に、この業界は、クレジットを大幅に拡大させた。世間はクレジット慣れし、顧客の生活が借金漬けになるまで、ドンドン貸し捲ったのや。

一般のアメリカ国民が、ジョーンズ型中流生活に追い付いた頃、一番カネモチのジョーンズは、既にそこを抜け出して、近くにもっと大きくて贅沢な家を買い、ドンドン差を広げて行った。

しかし、今日、ホントの上流階級の物差しは、どのくらい個人的サービスの満足度を得ているか、なのだよ。

コンレイ教授によれば、トップ階級のステイタスは、「人を待たす時間、美爪サロンでサーヴィス受ける時間、の長さ。そして何人を自分へのサーヴィスのために働かせるかだ」
1997年から2002年の間に、髪、爪、肌への美容サーヴィスによる国家歳入は42%増えた。「その他の人的サーヴィス」は74%増えた。さよ、「サーヴィスの享受」は、上流階級のシンボルとして、「高価な品物」に取って代わったのや。

アメリカの大都市では、ごくありふれたサーヴィスが、ただ値段がメッポー高いことだけで、ステイタス・シンボルになるのだよ。

去年NYでは、日本料理店「MASA」が、350ドルのディナー定食を始めた。(税金、飲物代別で)

MASAで体験できるのは、オイシイ料理とか、趣味のイイ料理とかでなく、「禅」の雰囲気と、「シェフにお任せ」という変幻自在な出会いなのだよ。これが終には「特別客」化する。だって26席しか無いのだ。今や、NYで一番のステイタス・シンボルは、「MASA」のテーブルを予約すること。

つまり、これが市場とはどう言うものかを表している、とコンレイ教授は言う。「階級とは、つまりインチキ手品みたいなものさ」「上の階級を目指すヤカラが、この壷の下にコインが有ると信じた瞬間、コインは既に他へシフトされていて、遅れを取ってしまうわけや」


BACK