U-MAIL(ウンコ通信) 2006/09/20
えー、わがクリストフ君は、4000人の応募者の中から選んだ女子学生キャシー・パークスを、まずはアフリカ、カメルーンの僻地の病院に連れて行った。いかに多くのアフリカ妊婦が難産に際して、オカネが無いために命を失うか、の現場を見せるためや。
「ヘラ鳥ウォッチング」
「‘SAVE MY WIFE'」:09/18
「救命手術はカネ次第:アフリカの妊婦」 ニコラス・D・クリストフ
(カメルーン・ヨカドウマ発)
プルーデンス・レモコウノは、当地の吹き曝しの病院のベッドの上に、ビクリともせず、横たわって居た。その腹部はたった今死亡した胎児で膨れ上がっている。その眼は恐怖に見開き、時々瞬くが、鈍く虚ろだ。
この公立病院のたった一人のドクター、パスカル・ピピは、あと何時間かは生き延びるだろうが、やがて、毎年出産で命を落とす世界50万人の妊婦の仲間入りをするだろうと。
その傍で彼女の夫アライン・アウォーナは「赤ん坊は死んだ。女房だけはなんとか助けて呉んろ!」と哀願して居た。
12日のコラムで紹介したように、この春オレは、一緒にアフリカ観察旅行する学生を募集した。4000人の中から選んだミシシッピー生まれの女子学生キャシーを連れて、今オレはアフリカに来て居る。
オレはキャシーに、発展途上国の母親の破滅的な死亡率を知って欲しかったのだ。なぜって、この25年間に世界中で50万人もの女性が妊娠によって死んだと言うことは、国際的なスキャンダルではないか。
事実、此処カメルーンでは、1998年以来、母親の死亡率は上がりっ放し。全アフリカ女性の20人に1人が妊娠によって死んで居るのや。女性にとってイチバンの危険は、懐胎することなのだ。
ワレワレは15日(金)に、カメルーン東南部の僻地の病院に到着して、瀕死のプルーデンスに出会った。此処では、難産に対応する産科の救急措置が出来ないのやねん。
24才のプルーデンスは、既に3児の母親。月曜日に陣痛が始まり、村の産婆が3日間面倒を見た後、オートバイの後部に乗せられて病院に運ばれて来た。しかし、どうしようも無かった。帝王切開手術料として100ドルが要求されたのや。しかし彼女の身内にとっては20ドルが限度だった。
オレは婦長ムーアサに訊いた。カネが足りずに死ぬ例は多いのかと。婦長はウロタエつつ「そんなに多くは無い」と。プルーデンスのような瀕死のケースには、当院は手術を行なわない、帝王切開手術受けて死ぬより、受けずに死ぬ方がイイからだと言うのだよ。
ワレワレ外人記者の眼の前で、患者を見殺しにするのはマズイと思ったのだろう、ドクター・ピピは、タダで手術する方法を探そう、と言った。しかし、プルーデンスは多量に出血しているので輸血が必要だが、「当地には血液銀行など無いから村の親族から適合する血液提供者を探さねばならない。しかし村は120キロも離れているので、間に合わない、彼女はもう数時間しか保たない」と言うのだよ。
さよ、開発途上国のこうした女たちは、「貧乏」「女性であること」「僻地」と言う条件で見放され、死ぬわけだ。
必要な西欧の援助は政治的にネジレて居るのだ。国連の援助基金は、母親の死亡率を減らす努力を続けて居る。しかし小ブッシュ政府は、アメリカからの援助基金を打ち切ってしまった。この援助が、結果として中国の中絶を援助することになる、というウソの告発を理由にだ。
ならばと、ワレワレはプルーデンスの血液型を尋ねた。看護婦が調べるとA型だと分かった。ワレワレはお互い、顔を見合わせた。オレもA型だがプルーデンスのA型とは適合するかどうか。オレと一緒に旅行することの多い、NYタイムズのマルチメデイア・物知り記者、ナカ・ナタニエルの血液がO型で、適合することが分かった。
血液さえ有れば、ドクター・ピピはホントに手術して呉れるのか? 彼はヤルと言った。そこで看護婦が町に血液を容れるプラスチック・バッグを買いに行き、オレとナカが献血したのや。直ちにプルーデンスに輸血され、ほんの少し顔色が良くなったように見えた。ドクター・ピピは直ぐに手術すると約束した。彼女の夫は喜びの叫び声を上げ、ワレワレに此処に居て呉れ、と哀願した。「アナタ方が行ってしまうと、プルーデンスは死ぬかも」と。
で、ワレワレは待つことにし、6時間が経過した。病院当局がプルーデンスの身内に、手術の前にもっとカネを出せと言い始めたのや。夫は1銭も持って居なかった。で、ワレワレが拠出した。これで万事OKと思った時、ドクター・ピピの姿が消えた。
看護婦が説明して呉れた「センセイは家へ帰ったよ。手術は明日やるんちゃう?」
ワレワレは、オダテてたり、懇願したり、脅したりした。しかし病院スタッフは動じなかった。
「今夜の内にプルーデンスが死んだらドースルつもりだ?」オレは詰問した。看護婦は肩をスクメて答えたのやねん。「それは神の御ココロでっしゃろが」
ウム。女子学生キャシ−は、どう反応したのか?このコラムではソコントコが分からない。
ところで、アフリカで母子が共に死ぬような難産のケースが多いのはナゼか?以前、クリストフ君のレポートでは、カラダがまだ出来上がっていない少女が結婚させられるため、産道に障害が発生するケースが多いとあった。膣と膀胱が爛れてタレナガシとなり、婚家から追い出され、小屋で死んで行く、というハナシだった。
小ブッシュ政府が、こうした状態をワザと放置しているとすれば、その理由はイロイロ推測出来る。エイズのケースと同じだが、高価な薬剤を処方出来れば、ビョーキはマーケット(市場)を提供することになるから、対応は速やかになる。それに対し、コンドームによる予防は薬剤の市場の障害になる。そこで小ブッシュ政府は、アフリカへのコンドームの配布を中止した。コンドームは神の摂理に反する、という原理主義者の告発に便乗するカタチで。
もっとウガって考えれば、中国、インドの「人口パワー」を眼の辺りにした西欧は、アフリカの「人口パワー」を抑えるにはビョーキを放置することが最上の策と考えているのかも。
ま、クリストフ君とキャシー嬢の今後のレポートに期待致す。安全無事をイノリつつ。